第9回相場の老若とは

若い相場・老境の相場とは

柴田秋豊先生は「天底と転換罫線型網羅大辞典」の中で、法則を適用する際に株価の位置を慎重に判断しなければならないと繰り返し述べている。
若い相場か老境の相場かによって、株価は反対の方向に振れることもある。若い相場、老境の相場とは、どのような状況をさすのだろうか。全てを理解するには「天底と転換罫線型網羅大辞典」を熟読し、実際の投資活動の中で習得されるしか方法は無いが、ここでは基本的な事項をわかりやすく解説しよう。

【図1】
図1

図1のTOPIX月足罫線を参照していただきたい。バブル崩壊後の日本のインフレ率は低く、日本経済も大きな成長をしていない。そのことが、相場の老若を非常に観測しやすくしている。つまり、株価が買われているのか、売られているのかが、罫線図にわかりやすく現れているのである。
TOPIXが3年間で半分の株価水準になったからといって、日本の経済規模や、会社員の給与が半分になったわけではない。株は実体経済に対して常に買われすぎ、売られすぎる。それがこの罫線図のように大きな振幅となるのである。

【図2】
図2

個別銘柄についても考え方は同様だ。過去10年にわたって企業規模や投資家の企業に対する期待感にそれ程変化がなければ、同じような株価水準をはさんで振幅を繰り返すことが多い。
中長期の投資スタンスであるならばその振幅をうまくとらえて売買することになる。ただし、その企業が明らかに大きな成長をしていたりすると株価は振幅はするものの、月足罫線図上では全体的に右肩上がりとなる。若い相場が切り上がり、老境の相場も切り上がるのだ。(図2)

【図3】
図3

逆に多くの建設会社の月足罫線図が右肩下がりであるように、企業規模や市場規模が明らかに縮小していく場合には右肩下がりとなる。若い相場が切り下がり、老境の相場も切り下がる。(図3)

つまり、年足や月足罫線図上で大きな段を描きながら上昇、下降するのである。中期(3ヶ月〜1年)での投資スタンスならば1年〜3年サイクル程度の山をみて、その中の段をとらえていけばよい。しかし、さらに大きな流れが見て取れるのならば、その流れを無視しては効率のよいパフォーマンスはあまり期待できないのである。
「柴田罫線」で投資をするなら、現在の株価がどのような位置なのかをしっかりと認識しなくてはならない。その上で、はじめて法則を適用させるかどうかを判断するのである。鈎足法則の適用も例外ではない。

学ぶポイント

・大きく成長している企業、業種は、罫線図も右肩上がりとなる。長期にわたっての企業規模の成長は、上げ相場のスタートの安値を切り上げ、下げに転ずる前の高値も切り上げながら罫線図を描く。

・1980年代後半のバブル時、1999年〜2000年のITバブル時のように、非常に大きなうねりに巻き込まれて形成された大相場のとき記録した株価は、確かに関門にはなるが、その後の相場をみる上で、若い相場、老境の相場の位置の判断を一時的に狂わすことも多いので注意が必要。

・柴田罫線は過去の罫線図があってはじめて活用できる。新規上場株の取引、上場後間もない銘柄の売買には基本的に適用できない(中長期スタンスの場合)。

・株式分割等があった場合の罫線図は、補正してみる必要がある。過去の関門がどこにあるのかについて、特に注意する。鈎足法則の出現は、ネットメンバーサービス「柴田秋豊の罫線」および「柴田法則PLUS」ではリセットされる。

●株は長く持てばいつかは上がるのか●

1990年のバブル期以前、日本の株式市場は右肩上がりだった。その頃に多くの投資家の間で言われていたのが「株は長く持っていればいつかは上がる」という言葉だ。これはどのようなことをいっているのだろうか。
サンプル 上昇、下落を繰り返しながらも徐々に下値を切り上げていく長期的な上昇トレンドの中であれば、短、中期的には株価が下落する直前で株式を購入し、その後含み損を抱えたとしても、長期的にみれば再度の上昇で株価は購入時を上回ってくるのである。
つまりバブル期以前の日本株全体が、日経平均株価やTOPIXの指標の示すとおり超長期的な上昇トレンド中にあっただけのことなのである(右図参照)。

それでは、バブル期以降はどうであろうか。日本株全体を表す日経平均株価やTOPIXの指標が右肩下がりの中で、短、中期的に絶好の買い場で株式を買ったとしても、その後の株価上昇時にきちんと売却をしていなければ、再度の下落時には購入株価を下回り多くの含み損を抱えることになる。「株は長く持っていればいつかは下がる」状況なのである。  現在(2002.12)でも、超長期的なトレンド(月足・年足)からみた日本株は、買いの法則は全く確認できず「底」をつけたとはいえない。
「柴田罫線」では「株価が安いから買い」とか「PBR(純資産倍率)が1倍以下だから買い」さらには「長期で持てばいつかは上がる」という理由で株式を購入するということは一切ないのである。

清光経済研究所は日本株全体がどのような流れの中の、どのような位置にあるのかをネットメンバーサービス「柴田秋豊の罫線」などを通して発信している。中期的にはどうか、長期的にはどうかを的確に分析するレポートは投資家にとって心強い味方だ。自分の投資スタンスにあわせて、株価のトレンドと位置をきちんと把握していただきたい。

学ぶポイント

「柴田罫線」では、株価が安いから長期で保有すればいつかは利益が上がるという考え方は一切ない。
→罫線図で株価の流れと位置を確認し、買い法則の出現ではじめて買うことができる。

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