第8回分散投資と損切りーリスクのとりかた
分割投資について
多くの投資家はリスクを分散するために分割投資をおこなっている。
利益をコンスタントにあげていくためには分割投資をおこなわなくてはならない。1銘柄だけに投資をおこなっていれば、もしその会社に予想しない何かが起こったら、相場全体が上昇している買いの好機であっても全く利益をあげられなかったり、場合によっては投資資金が回収できなくなってしまったりするからだ。
柴田秋豊先生は分割投資に関して、週間「株式と商品」の中で詳しく述べている。
右の囲みの記事はその全文を転載したものだ。旧字体等はあるが、理解することに問題はないと思われるので、じっくり読んでいただきたい。
学ぶポイント
・分割投資は秋豊流投資の重要な憲法である。
― 柴田秋豊 ―
日本株全体の流れと資金の分散
分割投資とは、投資をする際に資金を分割し複数の銘柄に投資をすることをいうが、上げの若い相場(上昇し始めたばかりの相場)から老境の相場(十分上昇したと考えられる相場)に至る上昇(買いベース)過程の資金の分散法もあわせて、もう少し詳しく解説しよう。
分割投資法も投資家それぞれの投資スタイルによって様々ではあるが、中長期の買いベース投資を基本として例を示す。株式に投資するための資金が1000万円あったとしよう。まずは日本株全体の流れと株価の位置によって投資の是非を判断する必要がある。
大きな流れに逆らって投資してはならないと「天底と転換罫線型網羅大辞典」にはっきり書かれている。大きい流れが下降トレンド中であったり、十分上昇しきった上げの老境相場と判断すれば新規での投資は控えるべきだ。休むも相場である。
大きな流れ(日経平均株価、TOPIX等の指標を利用して観測できる)が十分下落した下げの老境相場にあって、買い法則を出現させたり、斜線を切って上昇し始めたころはどうであろうか。
将来的に「底」となりうる位置だ。その際には、大きな流れを牽引しているような銘柄群から投資を開始する。もし、そのまま大きな流れが上昇したならば、大きく利益を得られる可能性が高い手法だ。しかし注意していただきたいのは、1000万円全てを投資するわけではないということだ。投資資金は500万円程度、約半分ぐらいが妥当だと考えておきたい。
その後のシナリオとしては、
(1)大きな流れは底と判断して買ったが下げトレンド中の一時的な戻りとなって再下落してしまった。
(2)保ち合い相場に入ってしまい株価が変動しなくなった。
(3)上昇トレンドに移り、1段目を形成した。
の3通りが考えられる。
(1)のシナリオの場合、投資している個別銘柄の動き次第では損切る必要がでてくるであろう。もし、個別銘柄が全体の流れに逆らって上昇していくような場合には持続する。だが、上昇が終了して売り法則が出現した際には利益を確定させることを考えたい。
(2)のシナリオの場合は、どの幅のレンジ内の動きかを見極めて、その保ち合いから放れるところを注意深く観察する。下に放れた場合は損切りを考え、上に放れた場合にはそのままとする。
(3)のシナリオの場合は、大きな流れの一段目の上昇の終了をしっかり見極める。同様に個別銘柄も段を形成しそうな場合には、過去の関門(関門については「学ぶ」シリーズ次回以降で解説)を注意深く観察し、その株価水準次第では下値斜線切り、鈎足売り法則の出現等をもって利益を確定させるのも手かもしれない
(3)のシナリオ後、いったん調整に入った大きな流れが再度上昇に転じた際にはどうすればよいか。上昇トレンド中の2段目と判断し、追撃買いをするのもよいだろう。資金の大半を投資すべき局面であるともいえる。投資対象も2段目や3段目の上昇に入りそうな銘柄に絞りたい。
さて、上昇相場が続いた後、相場の大きな流れが3段目に入って、上げの老境相場といえる位置になってきたらどうするべきだろうか。上図のように株式の比率を下げていくのである。
以上が大きな流れに沿った資金の分割(分散)投資法である。なお、ここで説明した投資の流れは、個別銘柄に対する資金の分割法にもそのまま応用できる。底となりうる位置で1000株投資したならば2段目の上昇時に2000株に買い増し、3段目は1000株のみにするという投資法だ。リスクの少ないところでの投資を最も厚くするのである。実践していただきたい。
分割投資と損切り
個別銘柄の選択法について述べてみたい。大きな流れの上昇にあわせて上昇してきた銘柄群、あるいはいくつかの上昇のテーマの中から1銘柄ずつ、たとえば5銘柄×100万円といったように分割投資をおこなうことを基本とする。業種別日経平均を利用するならば、上昇してきたいくつかの指標を構成する銘柄群から、それぞれ1〜2銘柄ずつ選ぶのである。あまりにも連動するような銘柄は分割投資の利点を得られない場合があることは注意していただきたい(ITバブル崩壊後、底だと思って購入した富士通とNECなどが同じように再度の下落をした例など)。
仮に大きな流れが上昇すれば、5銘柄のうち3〜4銘柄は上昇していくものである。2銘柄について損切りをしたとしても、残り3銘柄が上昇すれば大きな利益を得ることは難しくない。重要なことは、株式を購入した際に設定した損切り株価(流動性のある銘柄ならば15%程度を目安として、それ以上下落すると下げトレンドになる株価)をしっかり認識し、その株価を下回ったら必ず損切りをすることである。大きな含み損を抱える銘柄が無い状態を保つことが株式投資で勝つ秘訣だ。
2002年秋に大幅バージョンアップしたネットメンバーサービス「柴田秋豊の罫線」では、買いベース、売りベース(空売り)それぞれにポートフォリオ(資産)管理ができるようになった。さらに、目標株価や損切り株価を入力しておけば、毎日トップページでパーソナルニュースとして「目標株価に達しました」あるいは、「損切り株価になりました」といったように自動的に知らせてくれる。もちろん、鈎足法則の出現や、鈎足2法則での転換もニュース表示される。このような機能も、柴田秋豊先生の投資法を忠実に実行するための、現代ならではのツールと認識した上で、有効に活用していただきたい。
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