第5回機械的売買法とは

株価の動きを学ぶ 

TOPIXの月足罫線図をみてみよう。株価は高くなったり安くなったりしながら、長期的な罫線を描いていくことがわかる。時間の経過とともに波を描くように天井と底をつくるのである。
天井画像

株価がいったん上げに転じたら天井までずっと上昇すると決まっているなら、上昇し始めたら買いを入れ、下落し始めたら売ればよいわけだから、相場の観測は簡単だということになる。しかし、実際はなかなかうまくいかない。
なぜなら、安値から高値に至るまでの間には、1日単位の細かい株価の上昇、下落の繰り返しや、週単位や月単位の株価の調整があるからだ。その中で個人投資家の多くが振り落とされてしまい、結局は利益を手にすることができない。

投資スタンスを中長期(3ヶ月から1年、長くて2年以内の売買)とするなら、中心とすべき罫線図は週足罫線図や鈎足罫線図となる。それらの罫線図では株価の1日単位の細かい上昇、下落は表われてこないので気にする必要はない。ここでは週単位や月単位の株価の調整に注目しながら、株価の推移をみてみる。

段動き画像

安値から高値、高値から安値に至る過程を一つの山に例えるなら、その山はけっして滑らかなものではない。つまり、株価はある程度上昇したら調整し「押し目」をつけながら天井を目指し、天井からある程度下落したら「戻り」をつけることを繰り返しながら底に至るのである。
ここが天井と思って株式を売却すると、そこから急騰して株価が更に倍になったり、ここが底だと思って投資をすると、それは下落途中の一時的な戻りであって株価が更に半分になってしまったという経験をした人も多いだろう。このような株価の動きを柴田秋豊先生は「段」の動きとしてとらえ、「天底と転換罫線型網羅大辞典」の中で、その考え方を詳解している。

株価が押しをつけながら上昇し、下落する際には戻りをつけながら下落する過程を簡略化して右図に示した。個人投資家の多くが振り落とされてしまう押しや戻りの局面も、逆にその部分をうまくとらえることができれば、よりリスクの少ない、より効率の良い投資が可能になる。そのための手法が「柴田罫線」なのである。

ソフトウェア「柴田法則PLUS」やネットメンバーサービス「柴田秋豊の罫線」で、鈎足法則を有効にいかした投資法を実践する場合も、基本的な考え方は全く同じだ。「段」の考え方をマスターするかしないかで、資産運用の成績には大きな開きが生じる。機械的に出現する鈎足法則のどれを買い場ととらえ、どれを売り場ととらえたらよいのか――、今後しっかり学んでいただきたい。
次回の「柴田罫線を学ぶ」シリーズ第6回以降で、「段」の考え方についてさらに詳しく説明する予定だ。

学ぶポイント

株価は「段」(押し)をつけながら上昇し、「段」(戻り)をつけながら下落する場合が多い。

「機械的に売買する」とは

「柴田罫線」を知った投資家は「機械的に売買する」という言葉を耳にするようになる。この「機械的に売買する」とは、どのようなことをいっているのだろうか。
まず、「柴田罫線」の鈎足で買い法則の出現を確認して翌日に株を購入する、あるいは下値斜線を陰線の実体で下に切ったから売却するといった手法を「機械的に売買する」という。他にも、株価100円以下の株は手掛けないとか、雑誌などに掲載された「不良債権を多く抱える上位30社」には投資しないなど、自分自身で定めたルールを守ることも「機械的に売買する」ことだ。
「柴田罫線」をはじめたころはそれでよい。しかし、ここではもう少し深く考えてみよう。「柴田罫線を学ぶ」シリーズの第1回では「柴田罫線」をマスターして常勝投資家に至るステップを自動車の運転に例えて説明した。ここでも、自動車を運転することに例えてみよう。
東京駅から横浜駅まで自動車を運転する。運転が完全に自動化されれば、ボタンを一つ押せば自動車が勝手に横浜駅までドライバーを運んでくれるようになるのだろうか。残念ながら、現在よりはるかに科学技術が発達した場合でも、そのようにはならないだろう。

運転画像 東京駅から横浜駅までの間には、道路工事をしている場所もあれば、落下物が落ちていたりもする、突然の雷雨があるかもしれないし、タイヤがパンクすることもある。そのようなとき、予期しないことも含め、ありとあらゆることに対してその場の状況に応じて間違いのない判断ができるのは人間だけなのである。

人間が運転する自動車は、免許を持っているドライバーがいれば、ほぼ間違いなく無事故で目的地にたどり着くことができる。人によっては時間がかかったり、地図を見たりすることになるかもしれないが、結果としては「機械的に」横浜駅に到着することができるのだ。
相場の世界も同じである。基本的なルール(「柴田罫線を学ぶ」シリーズや法則書)、自動車の扱い方(ソフトウェアやネットメンバーサービスの使い方)をきちんと学び、運転のしやすい自動車(ソフトウェアやネットメンバーサービス)を利用し、教習所や実際の道路で練習することによって、機械的に運転する(「株式を機械的に売買する」)ことができるようになる。

運転し始めのころは左側走行を絶対の原則として守ろうとしていたドライバーも、実践を積むうちに子供の飛び出しの多い裏路地ではむしろセンター寄りに走行するなど、より高度な運転をほとんど無意識のうちに行えるようになる――株式投資においても「機械的に売買する」投資家になることはそれほど難しくはない。一定のルールをきちんと学び、実践を繰り返せばよいのである。人間のもって生まれた能力を最大限に活かしてほしい。 「柴田罫線」を使って売買している投資家の中には限りなく100%に近い勝率の人もいる。

「柴田罫線」の素晴らしいところは、自動車免許をとれば、うまいへたはあっても運転できるのと同様に、ある程度勉強すれば誰でもある一定の投資成績を残せるところにある。柴田秋豊先生は、株式投資の経験のまったくない若い女性に「法則」を伝授して株式売買をさせたところ、うまくいったと述べている。 「柴田罫線」を身に付け、「売り」「買い」の力関係がどのように変化し、どのような方向に進もうとしているのかをしっかり見極め、予期せぬ状況に臨機応変な対応ができるようになったとき、高度に「機械的に売買する」投資家になることができる。
株式、商品、為替を問わず相場の世界は、ありとあらゆる情報を元に売買する投資家、実需家がしのぎをけずっている非常に厳しい世界である。その中で、自分を守るものを何も持っていない個人投資家は、最も弱い存在だ。しっかり「柴田罫線」を身に付けていただき、自信をもって相場に臨んでほしい。

学ぶポイント   

「機械的に売買する」とは
最初のステップ
⇒斜線切り、鈎足法則出現で即出動。自分自身が定めたルールを守る。

(例)中長期の買いでの投資の場合

次のステップ   
⇒相場の状況に応じて、罫線を多角的に判断した上で投資する。

(例)中長期の買いでの投資の場合(上記の「最初のステップ」を基本にする)

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